患者さんから『入れ歯安定剤を使って良いか?』『先生に内緒で以前から使っているけど問題ないか?』など色々な質問を受けることがあります。
入れ歯安定剤は60年以上前から使用されているのにも関わらず歯科大学では安定剤の使用に否定的な考えがありその使用についての教育も受けていないのが現実です。
そもそも合わない義歯を作っているから安定剤が必要になり義歯の技術を高めることが大切だと教わって来ました。
しかし、現実は多く人が入れ歯安定剤を買って使用してますしTVCMが放送され、市場は100億円とも言われてます。
入れ歯安定剤を使っている人が多く存在してるのに一番知らない、知ろうとしないのは歯医者なのかも知れません。
実際私も安定剤でしっかり接着している入れ歯を患者さんにみせてもらって、使い方も実演してもらい安定剤に否定的な考えを持たなくなりました。むしろ30年間も毎日安定剤を入れ歯に付けて食事をしている熟練の技を見せて頂き感心しました。
最近小さな入れ歯を初めて作った方に「義歯安定剤を使った方が良いのか?」と聞かれたことがありました。基本的には小さな一本の歯の入れ歯には安定剤は全く必要ありません。などの影響も大きくやはり入れ歯安定剤の正しい使い方やアドバイスが必要だと感じました。
おおよそ市販されている義歯安定剤にはクリームタイプ、粉末タイプ、シートタイプ、テープタイプ、クッションタイプがあります。
クリームタイプと粉末タイプクッションタイプは薄く広がり易くクッション剤は粘度が高いため入れ歯の内面に均等に広がり難く入れ歯と粘膜の間が厚くなってしてしまい咬み合わせもズレたり高くなったり変化してしまいます。長期的に使用すると顎の骨が吸収される可能性があります。クッションタイプは咬合力の強い人は安定剤が薄くなりまたエチルアルコールが含有されていることが多く口の中に溶けて硬くなるのも早いです。硬く接着したクッション剤は入れ歯から剥がすのも大変な作業です。
クッション剤にアルコールが含有されている安定剤を大量に付けて運転すると飲酒運転の検査に引っかかるとの事例もあるようです。
クリームタイプと粉末タイプは入れ歯を装着する顎の骨や粘膜の形が不利な状態の方には有効です。ある程度調整された入れ歯で適量安定剤を使うと義歯が動いて擦れるのを抑えることができ咀嚼機能も向上します。
また加齢や服用中の薬の副作用などで唾液の分泌量が減っいる方は入れ歯の痛みが起こりやすいので不足した唾液の代わりに安定剤を使うとある程度改善すると考えられます。入れ歯が壊れてしまったり歯を抜歯して使っている入れ歯が落ちてくるなど一時的な不具合の時は新しい入れ歯が出来るまでの間安定剤を使って頂いて良いと思います。
どのような種類の安定剤であっても大量に入れ歯につける事は良くないです。安定剤が薄く入れ歯に広がって付けた方が接着力は高いそうです。歯に付いてしまった安定剤はキレイにブラッシングで除去、粘膜に付いた安定剤はしっかりガーゼなどで拭って口腔内を清潔に保ち入れ歯に付いた安定剤を全て綺麗に剥がしてから新しい安定剤を使用して下さい。
超高齢化社会を迎えるにあたり通院が難しく入れ歯の調整が困難な方には安定剤を使って食事が出来る様になることもあります。またご自身で入れ歯に安定剤を塗ったり清掃したり出来ない場合はご家族や施設の方などの介護者のサポートはQOL向上のためには非常に重要だと思います。入れ歯の調整具合、顎の骨や粘膜の状態、ご自身の入れ歯の使い方や管理の仕方によりその人に合った安定剤があり使い方もそれぞれ違います。長く美味しく食べられるためには、安定剤だけに頼るのではなく、お口に合わせて義歯を調整し定期的に必要な処置を行ったうえで正しく安定剤を使用して下さい。