院長コラム

歯周病の全身への影響

人間の体中には約700種類の細菌などの微生物が存在します。その内口腔内には300種類以上の細菌がいると言われています。この細菌から代謝される多糖体に細菌が付着しプラークとなり、さらに放置されると厚い細菌のバイオフィルムになり歯磨きでの除去が困難になります。歯周病の原因となるのは、歯垢と呼ばれる細菌です。歯垢は、歯磨きが不十分な部分に付着するネバネバした黄白色の粘着物です。この歯垢は時間とともに量が多くなり、酸素が少ない状態になると歯垢の中で酸素を嫌う嫌気性菌が多くなります。

嫌気性菌が歯肉に攻撃を仕掛けて身体の中に侵入しようとし、身体は菌をやっつけて侵入を抑えようと攻撃します。これが、歯周病のはじまりで、歯肉からの出血・発赤・腫脹などの炎症の症状です。この中でも、出血は歯周病菌と白血球の戦いの証です。出血をそのままにしておくと、歯垢は歯周ポケットの中に潜り込み、どんどんと歯周組織を破壊していき炎症を繰り返します。歯周病が起こるということは、口の中で常に炎症が続いているということです。その際、炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり(糖尿病)、早産・低体重児出産・肥満・血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与しています。

また、歯周病菌のなかには、誤嚥により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。歯周病菌のひとつP.g菌(Porphyromonas gingivalis)がもつ〝ジンジパイン〞というタンパク質分界酵素はアルツハイマー病悪化の引き金をもつ可能性が示唆されています。

歯周病は様々な全身疾患に関係してます。また全身麻酔の手術や抗がん剤治療、頭頸部への放射線量治療、緩和ケアの前後に、治療による合併症を防ぐためにもお口のケアが大切です。歯周病の健診・予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げることが可能です。日々の歯磨き・口腔ケアを見直し上手に歯科医院の健診を活用して口腔内の専門的な検査、クリーニングを行い全身の健康につなげましょう。